日本写真測量学会 関西支部

テクニカルセミナー/第92回空間情報話題交換会の報告


2017年12月1日(金)、大阪府立大学 I-siteなんば においてテクニカルセミナー/第92回空間情報話題交換会を開催しました。


『合成開口レーダ(SAR)を用いた海氷モニタリング技術』

日本大学 若林 裕之 氏

講演資料:
http://www.jsprs-w.org/meetings/data/w0092_wakabayashi.pdf

海氷,合成開口レーダ,多偏波観測,オホーツク海,サロマ湖

 第92回テクニカルセミナーでは,『合成開口レーダ(SAR)を用いた海氷モニタリング技術』と題して,日本大学の若林裕之氏にご講演いただきました.

 海氷は, 大気と海水の断熱材の役目を果たし, 海水から大気への熱エネルギーの移動を妨げます. こうした役目を持つ海氷は,地球温暖化の影響を顕著に受けるとともに,雪氷圏のみならずグローバルな環境変動に影響を与えるため, 若林氏は,全天候下で高分解能を確保した観測ができるSARを用いて,海氷状況をモニタリングする研究に取り組まれてきました. ご講演では,@SARによる海氷観測,A多偏波SARデータを使用した海氷観測について,お話しいただきました.

 @では,単偏波SARの後方散乱係数を用いた氷厚の推定について,実データに基づく解析結果を交えて,紹介していただきました. オホーツク海と南極での取得した観測データを基に,氷厚20cm以上では氷厚の厚さに伴い海氷表面付近の塩分濃度が減少することや, 冬期間の南極においては積雪の無い海氷表面の粗度が上昇することなどを示し, これらの特性を利用することで氷厚を推定できる可能性があることを説明されました.

 Aでは,航空機搭載Lバンド多偏波SAR(Pi-SAR-LおよびL2)を用いた氷厚推定や海氷域検出について, 解析手法と解析結果を交えて詳しく紹介いただきました.オホーツク海やサロマ湖で取得した観測データを基に, 高入射角におけるVV/HH後方散乱比と氷厚の相関が高いことや,散乱エントロピを利用することで,これまで検出が難しかった薄氷と海水を区分でき, 精度の高い海氷域検出につなげられることを示していただきました.

 ご講演いただきました若林様には、この場を借りてお礼申し上げます.


※測量系CPD協議会において認定された学習プログラムとして終了後に参加者へ受講書が配布されました。
※GIS上級技術者の認定を受ける際の貢献達成度ポイントとして申請できる参加証も配布されました。