日本写真測量学会 関西支部

>2021年度特別講演会・第107回テクニカルセミナー/空間情報話題交換会の報告


2021年6月25日(金)、>2021年度特別講演会・第107回テクニカルセミナー/空間情報話題交換会の報告をオンラインにて開催しました。


『シミュレーションで探る首都直下地震の様相と備え』

東京工業大学 大佛俊泰氏

講演資料:
http://www.jsprs-w.org/meetings/data/w0107_osaragi.pdf

『豪雨の予兆を捉える −豪雨のタマゴとタネ−』

京都大学 山口弘誠氏

講演資料:
http://www.jsprs-w.org/meetings/data/w0107_yamaguchi

 2021年度の特別講演会・第107回テクニカルセミナー/空間情報話題交換会では、「空間情報の観点からの災害の理解,災害への備え」と題した特別企画をオンラインにて開催しました。この企画は、東京工業大学の大佛俊泰氏と京都大学の山口弘誠氏による講演と、講演者と当支部の吉村支部長を加えた3名のパネリストによるディスカッションを行いました。

 はじめに、大佛氏から「シミュレーションで探る首都直下地震の様相と備え」と題したご講演をいただき、大佛氏がこれまで携わってきた防災・減災に関する3つの取り組み事例と、得られた知見を基に構築した防災・減災システムをご紹介いただきました。
 防災に関する取り組み事例では、1)木密地域における建物倒壊・道路閉塞・災害延焼及び避難行動の各シミュレーション結果を結合・連動させ、広域避難と市街地整備状況の評価した事例を、2)同時多発震災への消防対策として、延焼シミュレーション結果から消防支援や消防活動の戦略を検討した事例を、3)河道閉塞が消防車両の活動に及ぼす影響と、現地調査で得られる災害情報を活用した消防車両活用支援の効果をそれぞれ説明いただきました。そして、IT技術を活用した防災・減災システムをご紹介いただき、クラウドサービスを用いて現地の災害情報を収集し、シミュレーションに反映させ、支援情報・指示を更新することの有効性や、巡回の支援者と要支援者をマッチングにより、限られた人員・物資・時間を最大限に活用できる災害時活動支援ツールを説明していただきました。

 次に、山口氏から「豪雨の予兆を捉える −豪雨のタマゴとタネ−」と題し、豪雨の生成と発達のメカニズムと、それら現象を捉える観測技術や最新の研究についてご講演いただきました。講演の前半は、豪雨のタマゴ(生成)とタネ(発達)について、その現象やメカニズムを分かりやすくとともに、これまでほとんどの研究が豪雨の発達過程に着目したものであること、そのため山口氏は、豪雨の発達だけでなく生成過程を観測・予測する研究に取り組まれていることを話されました。
 講演の後半では、豪雨の発達・生成に関する近年の研究と、豪雨の将来変化について説明されました。豪雨の発達に関する研究では、近年、時間・空間分解能が向上したリアルタイムな気象レーザの情報を3次元表現することで高度な豪雨予測や防災情報につながる可能性があること、豪雨の生成に関する研究では、豪雨生成の基になる上昇気流の渦を観測・予測することが重要であり、そのために降雨だけでなく、上昇気流、雲量、水蒸気といった複数の観測情報を用いる必要があること、さらに豪雨の将来変化では、梅雨豪雨の将来変化がじわじわ進んでおり、後悔しない対策が必要であるとの考えを示されました。

 最後に、「災害の備えに求められる空間情報」を討議するパネルディスカッションを行いました。このディスカッションでは、はじめに参加者からの質問を受け付け、講師のお二人がひとつひとつ丁寧に回答されました。そして特別企画のとりまとめとして、吉村支部長から、災害の理解や備えに求められる空間情報や、レジリアンスの観点からの空間情報技術の必要性について質問し、講師二人の考えをお聞かせいただきました。参加者からたくさんの質問が挙がり、活発なディスカッションとなりました。

 ご講演いただきました大佛様と山口様にはこの場を借りてお礼申しあげます。


※測量系CPD協議会において認定された学習プログラムとして終了後に参加者へ受講書が配布されました。
※GIS上級技術者の認定を受ける際の貢献達成度ポイントとして申請できる参加証も配布されました。